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編集部のライターたちが書き下ろした
富山での子育てに役立つ情報をまとめています

ヘルスケア
2021.02.16

【健康Q&A 小児科】子どもが発達障害かもしれない

妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを各診療科の先生にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。

 

ご相談内容
子どもが発達障害かもしれません。どうすればよいですか。

 

発達障害とは?
病気ではありません。発達障害者支援法の第2条に「この法律において『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠如多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」と定義されています。最近は、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害をひとくくりに自閉症スペクトラム障害と呼んでいます。

 

発達障害を疑う訴えを教えて!
言葉が遅れている
言葉がなかなか出ない、こちらの言うことがわかっていない様子、言葉はあるが会話にならない、などです。

落ち着きがない
一般に幼児期の子どもは落ち着きのないのが自然であり、それが正常か異常かを判断するのは難しいものです。その中で多動というのは、ちょろちょろ動きまわる、高い所をかけのぼる、急に道路に飛び出す、親の静止がきかず迷子になりやすいなど、移動を伴った落ち着きのなさです。過動とは、常にモゾモゾして手足を動かしているような移動を伴わない落ち着きのなさです。過動は、年長になって出現することが多く、成人にも認めます。

親のいうことをきかない
これは、親に反抗している場合と、まったく親の呼びかけや指示を聞いている様子がないものに分かれます。いずれも発達障害の特徴ですが、不適切な養育態度や、軽度から中等度の難聴が原因のこともあり要注意です。

友達と遊べない
一人遊びはできるが、友達とは遊べないという訴えで、公園へ連れて行っても一人で遊ぶ、他の子どもを避ける、行きたがらないなど種々です。友達が自分の世界を混乱させる不安な存在に映っている場合や、嫌われて孤立する・どちらかと言えば遊んでもらえない場合もあります。

乱暴
相手を恐いと感じる時、言葉でうまく言えない子どもが注目されたい時、躾ができていない場合に認めます。

親から離れにくい
親の愛情不足、逆に甘やかし過ぎでも認めます。保育園や幼稚園への行き渋りは、園や家庭に心配ごとや不安があるのかもしれません。

偏食がひどい
食べ物の好き嫌いは誰にもありますが、特定の味覚を全く受けつけない知覚過敏は、発達障害を疑います。

 

発達障害児とは?
変わっている子ではなく、みんなとは違う子。困った子ではなく、困っている子。付き合うのが難しい子ではなく、世の中で生きていくのが大変な子。わからないことをする子ではなく、世の中の仕組みがわからない子。言うことを聞かない子ではなく、言われたことが理解できない子。これが正解です。

 

発達障害に対する誤解
発達障害とは、発達の遅れ、知能の遅れなど、何らかの遅れがある状態ではありません。人との関わり(社会性)がうまく持てないとか、多動、知能の遅れという「特性」あるいは「素因」を持っているために、実際の生活上で支障や不利益を来している状態を『障害』と呼びます。「特性」を持っていても生活上の困難さがない「ちょっと変わった人」は、有名人や芸能人、皆さんの周囲にもいるはずです。しかし、彼らには支援の必要がないので『障害』とは言いません。

 

なぜ、早期発見が大切か?
「発達障害児」を「通常児」と区別せずに養育や教育を行うと、家族や先生の期待どおりにできないたびに叱られたり怒られたりします。失敗経験が蓄積し、自信がなくなり自尊心が育ちません。その結果、自分は悪い子だとか、生きる価値がないと思い込み、不登校や精神科疾患に陥る、攻撃的で暴言暴力を振るうようになります。適切な診断は「特性」を持つ子どもに最適な育児を提供するためのお墨付きです。「当たり前」とは異なる状況で生活していることを理解し、できないことには手を貸す・先送りする・させない、嫌がることはもので釣る、正解を教えるなど、普通は行わない特別な育児や教育をすべきであることの根拠、障害福祉の恩恵を受ける保証につながります。

 

周りの人にできることは?
不適切な対応(細かくなんでも注意する、怒ってばかりいる、頻回の体罰など)を止め、子どもの話を傾聴し、常識や適切な行動を示しましょう。うまくできたら褒めてください。成功体験の積み重ねが基本です。薬は専門医と相談してからです。

(2014年春vol.48号掲載)

厚生連高岡病院小児科医 窪田 博道先生

昭和57年富山医科薬科大学(現・富山大学)医学部卒業。平成11年4月から現職。
小児科専門医。子どものこころ専門医。日本小児心身医学会認定医・指導医。
日本小児精神神経学会認定医。医学博士。広島カープファンクラブ会員。