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編集部のライターたちが書き下ろした
富山での子育てに役立つ情報をまとめています

ヘルスケア
2021.06.21

【健康Q&A 産婦人科】妊娠高血圧症候群

妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを産婦人科・小児科・小児歯科の各先生方にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。

 

ご相談内容
妊娠高血圧症候群はどんなものなのでしょうか。ならないように日常生活で気をつけることは?

 

妊娠高血圧症候群とは
妊娠中または産後(妊娠20週以降、分娩後12週まで)に高血圧または高血圧と蛋白尿を発症する病気を妊娠高血圧症候群といいます。妊娠高血圧症候群は、単に高血圧を呈するだけでなく、時に脳、腎、肝、肺などの重要臓器の障害をきたし、母児の生命に危険を及ぼす病気です。全妊婦の4〜8%にみられ、重症型は1〜2%です。再発率は約10%で前回の妊娠で妊娠高血圧症候群であった方は注意が必要です。

 

発病の可能性が高くなる方
妊娠高血圧症候群にかかりやすいのは、高齢妊娠(35歳以上ではそれより若い年齢に比し、発症頻度が3倍高くなります)、肥満、病気のある方(高血圧、腎疾患、糖尿病など)、初めて出産される方、前回妊娠高血圧症候群であった方、前回の妊娠から5年以上間隔があいている方、多胎妊娠の方、初診時の血圧が高い方などです。遺伝的要因もあるようで、両親が高血圧であったり、あなたのお母さんがあなたを妊娠したとき、またはご主人のお母さんが彼を妊娠したときに妊娠高血圧症候群になった場合は、あなたも発病する可能性がやや高くなります。

 

主な症状
妊娠高血圧症候群では、母体には高血圧、子癇発作(「痙攣」「意識消失」)、脳出血を含む脳血管障害、肝機能障害、腎機能障害、常位胎盤早期剥離(赤ちゃんがお腹の中にいる間に胎盤が子宮から剥がれること)などを起こし、児には低出生体重児(子宮内胎児発育不全によるもの、早産によるもの)、新生児仮死、子宮内胎児死亡などの異常を起こします。その中でも緊急の対応が必要となるものは常位胎盤早期剥離、子癇発作などで、これらは妊産婦死亡、新生児死亡の主な原因の一つとなっています。妊婦健診時に血圧が高いと指摘された方が、急な腹痛、持続的な痛み、出血がある場合、常位胎盤早期剥離が起きている可能性が高く大至急の対応が必要です。我慢せずに直ちにかかりつけ医を受診しましょう。

 

気をつけてほしいこと
安静が病気を改善するという医学的根拠はないものの、少なくとも就労を避け、心身の安静を図るよう努めることが必要です。心身のストレスが睡眠不足をきたし、血圧が上昇することは少なくないので、特に軽症例では無理をしないよう心がけましょう。
食事は、特別なカロリー制限・水分制限はしません。極端な塩分制限もしません。塩分は急激に減らすことなく、最終的には1日の塩分摂取量が7〜8gとなるようにしましょう。

 

治療方法
妊娠高血圧症候群の根本的治療は妊娠の終了ですが、妊娠週数などから妊娠継続させる場合には対症療法が中心となります。原則として入院管理を行います。入院管理は妊娠高血圧症候群によって引き起こされるさまざまな合併症の早期発見・早期治療につながります。
妊娠高血圧症候群は、現在のところ、有効な予防法はありません。病気の早期発見・早期治療が大切です。定期的に妊婦健診を受けましょう。定期的に健診を受けていれば、早期に異常が発見され治療できるので大事に至らずにすみます。妊婦健診で血圧の上昇を指摘された方は、家庭で血圧測定を行うようにしましょう。その中で血圧の上昇を認めた場合は早めにかかりつけ医を受診するようにしましょう。

(2016年春vol.56号掲載)

富山赤十字病院産婦人科部長 桑間 直志先生

昭和62年、新潟大学医学部卒業。平成6年より富山赤十字病院勤務。11年より富山赤十字病院産婦人科部長、24年より富山県産婦人科医会会長を務める。
日本産科婦人科学会専門医、新潟大学医学部非常勤講師、富山大学医学部非常勤講師、富山県母乳育児推進連絡協議会副会長、日本母乳の会研修委員、国際認定ラクテーション・コンサルタント。