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編集部のライターたちが書き下ろした
富山での子育てに役立つ情報をまとめています

育児
2020.09.08

【Baby Q&A】おもちゃのひとり占め

発達、しつけ、睡眠…子育てをしていると悩みがつきませんよね。
乳幼児の子育ての悩みを専門家にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「ようこそ! こどものせかいへ」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。

悩み ● 1歳8カ月児のママより
子育て支援センターで、おもちゃをひとり占めし、他の子に渡そうとしない娘。
どのように言い聞かせたらいいのでしょうか?

 

ひとり占めはいけないの?
指先が少しずつ器用になり、おもちゃを操作できる喜びと、自分のイメージで遊ぶことの楽しさを感じはじめた時期です。まだまだ自分しか見えない世界にいる1歳頃の子どもにとっては、遊びの魅力が詰まった“おもちゃ„を、ひとり占めしたいのは当然かもしれませんね。そして、少しずつ周囲の子に関心が向き始めると、他の子の持っているものが魅力的に見えてきます。ひとり占めどころか、他の子のおもちゃを取ろうとする姿も見られることでしょう。
大人から見ると、ひとり占めや横取りする行為は、“わがまま„に見えます。一方で、すんなりと他の子におもちゃを譲ってあげる行為には、“やさしさ„“思いやり„や“素直さ„を感じるのです。でも、本当はどうでしょう?
ひとり占めや横取りは、自分の思いが強いことの表れといえますし、すんなり人に譲ることができるのは、“こうしたい!„“ジブンノ!„という思いがそれほど強くないのかもしれません。もちろん、そのおもちゃに飽きてきた頃だったり、別の魅力的なものを見つけた時だったりしたのかもしれません。おもちゃで遊ぶよりも、人とのやりとり遊びの方が大好きなお子さんだったとも考えられますし、大人側の関わりがよかったのかもしれません。いずれにしても、「素直に譲る=OK、ひとり占め=NG」という単純なものではないのです。

子どもは子ども
ルソーという思想家の言葉に、「子どもは小さな大人ではない」というものがあります。
大人としての理想的な姿を、子どもにあてはめて教え込もうとすることを批判し、子どもには独自の姿があることを訴えるものです。
私たちも、まだ幼い子どもに、多くの理想形を求めがちかもしれません。子ども同士が同じ場にいるだけで、“お友達になること„、“仲よく遊ぶこと„を期待し、理想像から大きくずれると、何とかしなければと焦ります。でも、言って聞かせて、仲よく遊ぶものではありませんし、むしろ、年齢発達に応じた人との関わり方があるのです。

理解する・伝える・ 関わる
1歳頃のひとり占めは、この時期に伸びてほしい「自我」や「遊び欲求」が表れた姿です。まずは、「どれも遊びたいよね」などと、子どもの思いに共感する言葉を伝えましょう。そして、周囲に目を向ける言葉を添えます。「○○ちゃんも使いたいんだって」「一度にこんなに遊べないね」「他のお友達が使えなくて困ってるよ」などです。他の子に譲るための説得ではなく、客観的な事実確認と自分以外の子どもにも考えがあると伝えることが目的であり、この時期にふさわしい学びでもあります。
関わりでの目標は、「他児に譲る」ことではなく「子どもの思いが満たされる」ことです。別のおもちゃや遊びに誘うことで、思いが満たされる場合もあります。しばらくは、思いどおりに遊ぶことを保証し、見守ってあげる場合もあるでしょう。他児を交えて楽しく遊ぶことは、さらなる発達の刺激にもなります。
「貸してあげようか」との提案も大切ですが、満足感がなければ何事も身につかないことを心に留め、大らかに関わってみましょう。

(2014冬vol.51号掲載)

石動 瑞代先生

富山短期大学 幼児教育学科教授
富山短期大学付属みどり野幼稚園園長
お茶の水女子大学家政学部児童学科卒業。県立保育専門学院等の勤務を経て平成17年4月より富山短期大学幼児教育学科勤務。
平成21年、日本大学大学院人間科学修士取得。
●専門分野 保育学
●担当授業 保育原理・乳児保育・家庭支援論