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編集部のライターたちが書き下ろした
富山での子育てに役立つ情報をまとめています

ヘルスケア
2021.02.16

【健康Q&A 小児歯科】子どもの歯の外傷

妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを各診療科の先生にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。

 

ご相談内容
子どもが転んで前歯が少し奥に引っ込んだように見えます。痛がってもいないので放っておいて大丈夫でしょうか?

 

子どもに多い歯の外傷
最近の子どもたちの虫歯は以前に比べかなり減ってきましたが、一方でご質問にあるように「転んで歯をぶつけた」などの歯の外傷が目立って増えてきています。子どもたち、特に小さなお子さんは下半身に対して頭の大きさが大きく転びやすいうえに手でかばうなどの防御能力もまだ確立されていませんので、成人に比べ歯の外傷の頻度は高くなるためです。
歯の外傷を放置すると次のような困ったことが起こりえます。
1つ目は、一般的に歯の神経と呼ばれている歯の中にある血管が切れて、歯が黒く変色したり、時には歯ぐきが化膿して大きく腫れてきたりすることもあります。
2つ目は、かみ合わせが今までと違う位置で固定され、歯と顎に負担がかかってしまうこと。
3つ目は、外傷を受けた歯が自然に抜けないうちに永久歯が本来と違う場所から生えてくることがあります。
したがって、たとえ痛みを訴えていなくても、早めに専門医を受診されることをおすすめします。
次に、そのようなトラブルを未然に防ぐ為のいくつかのことをお話します。

 

歯の外傷の種類
歯の外傷には大きく分けて、歯を支えているじん帯が衝撃で傷ついてしまって、触ると歯本体が動いたり、抜け落ちたりしてしまう「脱臼」と歯の一部が欠けてしまう「破折」の2種類があります。乳歯は永久歯に比べ、歯の根っこが短いため衝撃に耐えられず「脱臼」が起こりやすく、一方永久歯では「破折」がよく起こります。

 

治療方法
脱臼した歯の治療法は、動いている歯を安静に保ち血液の流れが止まらないように、両端の歯と接着剤で2~3週間固定します。この接着剤を取った後も1~2年間レントゲン撮影などの定期的観察が必要です。
破折した歯の治療法は、虫歯の治療法と同じく、欠けた部分を詰め物で直します。この時欠けた部分が大きくて、しみたり、何か食べた時に痛みが出る場合は、神経の治療が必要です。

 


図1「脱臼」…両端の歯と接着剤で2~3週間固定します。

 


図2「破折」…欠けた部分を詰め物で直します。

 


図3「破折」…神経の治療が必要です。

 

歯の外傷の見分け方
一般的に歯の破折は簡単に判断できますが、軽い脱臼は目立った変化があまりなく放置され、数カ月後歯が黒くなってきたと受診される方が時々見受けられます。
歯の外傷は処置が早ければ早いほど予後が良好に保てます。

 

来院されるまでに
転倒などで歯のほかに顔や頭をぶつけた場合は命に関わることもありますので、まず小児科や外科を受診されることをおすすめします。
もし、歯が抜けてしまった場合は、歯の根っこの部分を触らず、すぐに牛乳に漬けて歯科医院へ持参してください。また、歯が動いたり、歯ぐきの中に埋まってしまったりした場合は、むやみに触らずできるだけ早く歯科医院を受診してください。
いずれにしても、もしお子さんが歯をぶつけたり口の中から血が出ていたりした場合は専門医に電話をして指示を受けてください。

(2015冬vol.55号掲載)

あすなろ小児歯科医院小児歯科医 河村 良彦先生

明海大学歯学部卒業。
あすなろ小児歯科医院勤務。
日本小児歯科学会会員、日本小児口腔外科学会会員。