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富山での子育てに役立つ
「まさか私が!?」40代二児のママが乳がんになった話(後編)

2年前、私は初期の乳がんと診断されました。
「子どもたちの成長をずっと見届けたい」。その一心で、再発や転移を防ぐため、右胸の全摘出手術を受け、その後は抗がん剤治療とホルモン療法を選びました。
コラムの前編はこちら
退院直前で足止め…さらに温泉でまさかの失敗

↑入院中につけていたドレーン
術後は10日ほどで退院予定でしたが、ドレーン(体内の血やリンパ液を排出する管)がなかなか抜けず、入院期間は約20日に延びました。
体は元気だったので病室では仕事をしたり、本を読んだり。退屈はしても、体力的にはつらくなかったのが救いです。
やっと退院したものの、術後1か月後に子どもの付き添いで温泉に入り、傷口に菌が入って感染…。
防水シールを貼っていたから大丈夫と油断してしまい、医師からはしっかりお叱りを受けました。この影響で、抗がん剤治療の開始は3カ月ほどずれ込んでしまいました。
髪もまつ毛も眉毛もゼロ。家族の笑顔に救われた

↑脱毛中に役立ったウィッグと不織布キャップ
抗がん剤は約半年間、3週間ごとに通院して投与しました。一番の外見の変化は、開始から約1か月後にやってきた脱毛です。
「あんまり髪の毛抜けないかも」と淡い期待を抱いていた矢先、車の中で手ぐしを通したら髪がごっそり…。 そこからはどんどん抜けていき、髪だけでなく、まつ毛・眉毛・鼻毛もほぼなくなってしまいました、眉毛はネットで買った「眉毛シール」でカバー。鼻毛がなくなったせいで鼻血も出やすくなりました。
ウィッグは自治体の補助を利用して約10万円でショートカットのものを購入。家では毛が落ちないよう不織布キャップや帽子を着用していました。 茶色いキャップを見た子どもたちが「栗みたい!」と笑ってくれ、少し気持ちが軽くなりました。
髪のない頭はやはり見せづらく、なるべく子どもたちには見せないようにしていましたが、下の娘に不意に見られたとき、「恥ずかしいよね、はげてて」と言った私に「はげててもママ好きだよ」と返してくれて、胸が熱くなりました。
身近な人には先に「ウィッグ生活になるよ」と伝えておき、一期一会の相手は私の髪のことなんて気にしていないと思うと、不思議と気が楽に。 抗がん剤が終わって半年ほどでショートヘアに戻り、白髪やちぢれ毛は出ましたが、今はほぼ元通りです。
副作用は軽め。でも免疫力はガタ落ち
抗がん剤の副作用は、薬の種類や体力などによって個人差がありますが、私の副作用は「普段より少し疲れやすい」「身体を動かすと息が上がりやすい」程度で済みました。疲れたときは「少しママごろんするね」と子どもに伝え、家事も手を抜きました。会社も通院での遅刻や早退に理解を示してくれたので助かりました。
抗がん剤の点滴をしているときは酔っぱらったような眠気がありましたが、水分を多くとると楽になり、点滴後に休んでから車で帰れる日もありました。慣れてくると、点滴中に仕事をしたり、病院のカフェで買ったコーヒーを飲んだり、“癒しタイム”になることも。
ただし免疫力は落ち、風邪をひきやすくなったのは事実。マスクやうがいは必須で、半年間の化学療法を一度も中断せず完走できました。
入院費は抑えられたけど…通院費が地味に痛い
高額な医療費がかかった場合、自己負担を一定額以下に抑えてくれる「高額療養費制度」のおかげで、手術・入院の自己負担は月8万円程度に抑えられました。ただし、入院中は個室を選択したため、差額ベッド代は別途かかりました。
意外と家計に響いたのが、抗がん剤治療の通院費。3週間に一度、1回あたり1~2万円ほどで、半年続くとかなりの額に。正直、「がん保険に入っておけば…」と思いました。
保険は使えず…救ってくれたのは母の愛
がんの診断を受けてから気づいたのですが、加入していた生命保険は、契約当時の健診結果で「乳房が要精密検査」だったため、乳がんは免責(対象外)になっていました。
そんな中、母が結婚前からかけてくれていた少額保険があり、手術・入院で約50万円が支給されました。このおかげで個室代などをまかなえ、本当に助かりました。
5年間のホルモン治療。妊娠希望は必ず相談を
私の乳がんは、ホルモン療法も化学療法もよく効くタイプ。全摘後に抗がん剤を投与し、その後は女性ホルモンを抑える薬を5年間服用します。 女性ホルモンを抑えるため、更年期のような症状が出ることもあり、生理も止まってしまいます。
妊娠希望がある場合は、必ず医師と相談して治療方針を決める必要があります。
早期発見で守れた“いつもの日常”
治療前は不安でいっぱいでしたが、2年経った今、再発や転移もなく日常に戻れています。3か月ごとの受診や半年ごとの検査は続きますが、普段は病気のことを忘れてしまう日もあるほどです。
これまでと変わらず家族との時間を過ごせているのは、早期発見できたからこそ。
忙しいママこそ、自分の体を後回しにせず、定期的に検診を受けてほしい。それが私の一番の願いです。
(ママライター N.Y)