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ヘルスケア2021.02.16

【健康Q&A 産婦人科】環境ホルモンとは何ですか

妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを産婦人科・小児科・小児歯科の各先生方にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。

 

ご相談内容
環境ホルモンとは何ですか。妊婦や胎児・子どもへの影響について教えてください。

 

環境ホルモンとは
1990年代後半「環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)」が大きな注目を集めました。最近は、環境ホルモンという言葉を耳にする機会はめっきり減りましたが、どうなったのでしょうか。
2013年2月、国連環境計画と世界保健機関は、「生物のホルモンと似た作用を持ち、その働きを乱す『環境ホルモン』の疑いがある化学物質は約800種類にも達し、人間や野生生物が日常的にこれらの化学物質にさらされている」との懸念を示しています。環境ホルモン問題は決して終わってはいないのです。
環境ホルモンは、体外から入ってきて、生物本来のホルモンの働きを乱す物質の総称です。体内には、生体のバランスを保つのに不可欠なホルモンを産生する機能があります。ホルモンは、汗とは違って体内に分泌されるため「内分泌物質」とも呼ばれています。ホルモンは、ごく微量でさまざまな調節を行う働きを持っています。「環境ホルモン」は、このホルモンと同じ働きを示したり、働きを妨げたりする人工の化学物質のことです。

 

どんな種類があるの?
環境ホルモンとして、発泡スチロールの原材料や塗料、プラスチックの添加剤や食器の原料、ダイオキシンや有機塩素系の農薬などがあげられ、生活のなかで使用されています。
代表的な環境ホルモンとして、ビスフェノールA(BPA)があります。BPAは、1990年代の後半には多くの缶詰や缶飲料から検出されていました。2011~2012年に、わが国で流通する市販の国産缶詰で検討した国立医薬品食品衛生研究所の報告によれば、10年前に比べて、BPA溶出量は約4分の1に低減しています。これは国内の製缶業界が世界に先駆けて開発したBPA低減缶の普及によるものと推測されています。また焼却炉の基準が厳しくなったため、ゴミの焼却過程において、ダイオキシンはほとんど発生しなくなりました。10年前に比べるとわれわれが環境ホルモンに接する機会は大きく低減しているといえます。
私たちは生活を便利にするために、多くの化学物質を製造し使用してきました。医薬、農薬、食品添加物以外で、1トン以上製造または輸入される化学物質に限っても、年間新たにおよそ300種類以上も登場しています。身の回りで使用する前には、決められた試験法で事前審査を受けていますが、動物(ネズミ)と人間では種差があるため、化学物質に対する反応性が異なる場合があります。動物で行った試験の結果を、人間にあてはめることには限界があることを認識しておく必要があります。

 

妊婦や子どもにはどのような影響があるの?
もともとホルモンはごく微量でその効力を発揮しますが、「環境ホルモン」作用もごく微量で起こります。また特定の組織が形成される特定の時期に限って、その影響が大きくあらわれることも知られています。このため胎児や乳幼児は大きな影響を受けやすいと推測されています。胎児期や乳幼児期など、環境ホルモンの影響に敏感な時期に受けた影響が、何年も後になってあらわれる可能性も指摘されています。現在のところ、環境ホルモンをはじめとする化学物質が、妊婦や子どもの健康にどのような影響を与えているのかは、はっきりしていません。

 

エコチル調査
ここ数十年の間に子どもたちのアレルギー疾患が急増しました。経済成長が著しい他国においても同様の傾向がみられています。経済活動の発展にともなう環境の変化、生活様式や食習慣の変化など、現代文明に特有の何らかの刺激が、アレルギー疾患の増加に関与している可能性が高いと考えられます。ひとつの可能性として環境ホルモンを含む化学物質との関連が疑われています。
2010年度より、全国15地域で、3年間で10万人の妊婦さんにご協力をいただき、生まれた子どもが13歳に達するまで追跡する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」がスタートしました。エコチル調査の目的は、化学物質の曝露や生活環境等が、子どもの健康にどのような影響を与えるかについて明らかにし、化学物質等の適切なリスク管理体制の構築につなげ、安全・安心な子育て環境を実現することにあります。エコチル調査の結果は順次、環境省のホームページ等で公表されますので、注目してください。

(2014年春vol.48号掲載)

富山大学医学部公衆衛生学講座教授/エコチル富山ユニットセンター長 稲寺 秀邦先生

昭和60年金沢大学医学部卒業。専門は公衆衛生学、環境医学。
現在、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に取り組んでいる。

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