ヘルスケア 0〜2歳 3〜6歳 小学1〜3年 小学4〜6年

【第2回】歯科ミントクリニックの先生に聞く!大事な歯の話

この連載では毎月、歯科医師が歯の健康について分かりやすくお届けします。
毎日の子育てや妊娠生活の中で「知っておくと安心できること」「今だからこそ大切にしてほしいこと」などを学べる記事になっています。

今回は、歯磨きを習慣化するアイデアについてです。
新学期が始まった今からでも始められるちょっとした声かけの工夫などを分かりやすくまとめました。

監修:歯科ミントクリニック

院長 竹島 健太郎

2002年 鶴見大学歯学部卒業。2004年 横浜総合病院に非常勤歯科医師として勤務。

2007年 歯科アールクリニック勤務を経て、2010年に歯科ミントクリニックを開院。

インディアナ大学客員研究員。日本補綴歯科学会会員、日本臨床歯科学会会員(SJCD)、日本顕微鏡歯科学会会員。Er:YAGレーザー臨床研究会所属。

インビザラインライセンスドクター。臨床歯科麻酔管理指導医。そのほか、各種学会・研究会に所属。

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「一生脱げないTシャツ」のお話

私はよく、地域の小学校へ歯科保健の講演に行かせていただきます。その際、子どもたちに必ず投げかける質問があります。

「みんな、ちょっと想像してみてね。毎日、絶対に脱がずに着続けなきゃいけないTシャツがあるとしたら、次のどっちが良いですか?」
A:いつもお洗濯して、ピカピカでいい匂いの状態
B:たまにしか洗わないから、黄ばんでいて、ちょっと臭うような状態
こう問いかけると、小学生のみなさんはノリノリで元気に手を挙げてくれます。

「A!」「絶対にAがいい!」と、体育館に元気な声が響き渡ります。誰もBを選ぶ子はいません。
そこで、みんなの顔を見渡しながら、私は少し声のトーンを落として、続けてこう問いかけます。

「じゃあ……もしそれが『自分の歯』だったとしたら、どうですか?」
A:毎日綺麗に磨いて、ピカピカの歯
B:たまにしか歯磨きしない、しっかり汚れを落としていない歯

この瞬間、子どもたちの表情がハッと変わります。さっきまで大騒ぎしていた体育館がシーンとなり、「うわぁ……」という顔をして、自分の口元を押さえる子もいます。

子どもにとって「歯の健康」や「虫歯予防」という言葉は、少し難しくてピンときません。でも、「毎日着るTシャツ」に例えることで、歯磨きが自分の大切なものを綺麗に保つための、当たり前のお手入れなのだと、自分ごととして強烈に実感してくれるのです。

歯は、一生脱ぎ捨てることのできない、たった一つの大切なTシャツと同じなのです。

歯磨きの前に見直したい、朝ごはんの秘密

さて、その大切な「歯というTシャツ」を毎朝お洗濯(歯磨き)するわけですが、その前に一つ、とても重要なことがあります。それは「朝食をちゃんと食べているか」ということです。

「朝はバタバタしていて、とりあえず食パンに甘いジャムを塗って食べさせて終わり!」というご家庭も少なくないかもしれません。準備も片付けも楽ですよね。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、歯科医師の視点、そして子どもの健全な発育という視点からお話しすると、食パンにジャムよりも、実はご飯とお味噌汁といった和食の方が、圧倒的に健康的で、口の環境にも良いのです。

理由は大きく3つあります。

1.噛む回数が違う
柔らかい食パンに比べて、ご飯とお味噌汁(具材にもよりますが)の組み合わせは、しっかり噛まないと飲み込めません。

噛む回数が増えると、顎の発育が促されるだけでなく、脳に刺激がいき、朝からスッキリと目が覚めます。

2.「天然の歯磨き粉」唾液がたくさん出る
よく噛むことで、口の中には唾液がたくさん分泌されます。

唾液には、口の中の汚れを洗い流す自浄作用や、虫歯菌が作る酸を中和する働きがあります。つまり、しっかり噛む朝ごはんは、食べるだけで口の環境を整えてくれるのです。

3.口に残る糖分の違い
ジャムをたっぷり塗ったパンは、糖分が非常に多く、さらにパンの性質上、歯の溝や歯と歯の間にベタベタと張り付きやすいです。一方、お米はパンほど歯にへばりつきにくく、虫歯のリスクという点でも和食に軍配が上がります。

もちろん、毎日和食を完璧に作るのは大変です。週末だけ、あるいは週に3回だけなど、無理のない範囲で「しっかり噛める朝食」を意識してみてください。

新学期の忙しい朝に! 歯磨きを習慣化するアイデア

朝食でしっかり脳を起こし、唾液を出した後は、いよいよ歯磨きです。時間がない朝に、子どもにサッと歯磨きをさせるためのアイデアをいくつかご紹介します。

1.タイミングを固定する
「ご飯を食べたら、すぐ歯を磨く」「顔を洗うついでに磨く」など、毎朝のルーティンの中に歯磨きのタイミングをしっかりと組み込んでしまいましょう。

子どもは「いつやるか」が明確な方が動きやすくなります。

2.朝は「スピード勝負」と割り切る
歯科医としては「毎食後、完璧に磨いて!」と言いたいところですが、現実の朝はそうはいきません。
朝の歯磨きは、夜の間に増えた口の中のネバネバ(細菌)と、朝ごはんの食べカスを「とりあえずリセットする」時間と割り切りましょう。

朝はサッと全体を磨くだけでもOK。その代わり、時間のある夜に、親御さんの仕上げ磨きも含めて、じっくり完璧に磨き上げるというメリハリをつけるのも一つの手です。

3.あの「魔法の言葉」を使う
子どもが歯磨きを嫌がったり、ダラダラしている時は、ぜひあの小学校での話を思い出してください。

「ねえねえ、一生脱げないTシャツ、ちゃんとピカピカにお洗濯した? 黄ばんで臭いTシャツのまま学校に行くの?」
と声をかけてみてください。
「うわっ、それは嫌だ!」と、慌てて洗面所に向かってくれるかもしれません。

磨き終わったら、「わあ、今日のTシャツ(歯)、ピカピカでかっこいいね!」と大袈裟に褒めてあげてくださいね。

最後に

毎日の習慣は、一朝一夕には身につきません。
イライラしてしまう日もあると思いますが、ママやパパが笑顔で送り出してくれることが、子どもたちにとって何よりのエネルギーになります。

歯磨きも、朝ごはんも、完璧を目指す必要はありません。できることから少しずつ、ご家庭なりの心地よいリズムを見つけていってください。

地域の歯医者さんも、健診という形で皆さんの「ピカピカのTシャツ作り」をサポートしています。いつでも頼ってくださいね。

次の一歩

明日の朝、お子さんが歯磨きを終えたら、「わぁ、一生着るTシャツ、ピカピカになったね!」とぜひ一度声をかけてみてください。お子さんの反応が楽しみですね!